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注目の企業に学ぶ(経営者インタビュー):
株式会社 オーク

2019.03

“土木”は地球そのものであり、人と自然を共生させる叡智です

株式会社 オーク

株式会社オークは、どのような地盤でも確実に杭を打ち込める技術力と、騒音対策や安全対策、環境配慮、施工品質の向上など、様々な視点から独自開発した新工法を有する基礎工事の専門家集団。創業から四半世紀、その間に二千近くもの施工実績を残しています。
業界内に数え切れないほどの革新をもたらしてきた、樫本孝彦社長にお話を伺いました。

1.どんな地盤でも確実に、自然にも人々の暮らしにも配慮した工事を。

当社は、基礎工事を専門に行なう企業です。簡潔にいえば、建物、橋梁、堤防など、あらゆる建造物を支えるための土台づくりが私どもの仕事なのですが、その土台ができあがるまでの工程には、様々な業者や技術者、専門家たちの力が関わっています。まず初めに設計コンサルタントが企画を立案し、地質調査が行なわれます。構造物の安全性を担保するためには、どのような杭をどれだけ打ち、どのように支えなければいけないかが計算されます。その結果から図面が描かれ、それに応じて杭(鋼管・コンクリート杭等)を準備します。地面を掘削して正確に打ち込む(埋設)ことが我々の役目になります。

ただ単に“打ち込むだけ”と思われるかもしれませんが、非常に高度な技術を要する工事です。様々な工法を駆使あるいは組み合わせるなどして、どれほど強固な地盤でも、逆にとても軟弱な地盤でも打ち込まねばなりません。私どもの強みの一つは、その「どのような地盤でも確実に施工できる」ということです。岩盤などの硬質地盤でも掘削でき、作業が困難と思われる狭小地や段差地でも、正確に施工できる技術力があるのです。その背景には当社独自に開発、実用化してきた新工法や新技術があります。私どもは既存工法の弱点や難点を発見するたびに、それを解消・解決するための研究をしてきたのです。もちろんそれは現在も続いているのですが、これまでに取得した特許や実用新案などの権利は、私個人のものも含めると50件を超えるまでになっています。

中でも、騒音対策を施した「OAK-DASH(オークダッシュ)工法」が代表的なものの一つですが、ほかにも廃タイヤを地面に埋設して振動を低減する「Ti-TAN(タイタン)工法」は業界外でも大きく注目されました。交通振動・工事振動を防止するだけでなく、廃タイヤのリサイクルや不法投棄問題の解決策としても期待できる新工法だったからです。近年では、杭の支持層確認装置の開発にも成功しました。数年前、高層マンションの基礎杭が支持層に達しておらず、建物が傾いて大問題になったニュースをご記憶の方も多いと思います。このとき私は、建設業界の実情、実態を踏まえたうえでの解決策が必要だと痛感しました。当社に限らず、無責任な仕事をしていいなどと考えているような技術者は一人もいません。誰かを悪者にしてすませられる問題ではないのです。その一方で、これはチャンスだとも思いました。一般の方々に、基礎工事の重要性を知っていただけるチャンスだと。そして開発したのが「Rebec(リーベック・写真①)」という、一本一本の杭が支持層に到達しているかをリアルタイムに測定できる試験装置です。ご存じの通り、日本は火山大国で隆起を繰り返しながらできましたから、少し位置がずれるだけで支持層の深さも地質も異なります。その問題を簡便にクリアできる装置を開発できたのです。

2.固定観念も業界の垣根も超えた、全包囲型の“アンテナ”を持つ。

このような新工法をいくつも開発できたのは、私どもが常に“アンテナ”を張ってきたからだと思います。業界内の出来事だけでなく、自分の行動や日々の業務、社会の動きにまでアンテナを伸ばす。興味を覚えたことや、疑問に感じたことは、解決するまで答えを探求すること。こうした思考と行動を習慣化するまで繰り返してきたのです。実は当社には、大学の研究施設並みの分析器があり、杭工事で発生した土砂をサンプリングし分析を行ないます(写真②)。掘削した地層にレアメタルや貴重な資源が埋まっていても、何もしていなければ気づくことすらありません。けれど、分析技術も含めてですが、準備さえしていれば“発見”できる可能性が生まれます。この姿勢をどのような状況でも徹底することが重要なのだと思います。

常々私は感じているのですが、土木は地球の、万物の事象に関わる自然科学なんです。土と木という文字通り、自然を相手にし、自然と人工物とを共生させるための叡智なのだと思います。そのように捉えると、例えば建設・土木業と農業との間に見えない境界線を引いてしまうことの無意味さに気づきます。一例を挙げると、防災・減災目的で河川堆積土を掘削しますが、この掘削した土を土木業界では「残土」と呼びます。一方で農業の見地に立てば肥沃な「土壌」で有効な資源です。現在、実際に取り組んでいることなのですが、台風などのたびに流入堆積した「残土」を莫大な予算をかけて投棄するのではなく、農地の「土壌」へと変える計画を行政とともに進めています。これが上手くいけば、モデルケースとして全国の河川の防災対策にも利用できるはずです。

写真① 地盤の支持力を施工時に測定できる「Rebec」

写真② 構成元素を分析する原子吸光分析機

写真③ 低カリウム根野菜の水耕栽培実験

また、腎臓病の方でも食べられるような「低カリウム根野菜」(写真③)の栽培方法も、大学の先鋭と一緒に研究しています。農業に活かせる建設土木の知識や技術は無数にあり、逆に建設業に活かせる農業の知恵も限りがないからです。それに、両者を上手くリンクさせることができれば、建設業の企業の雇用の安定化にもつながると思うのです。現実的に、地方では特に建設業は厳しい状況にあります。もしこのまま建設土木業に携わる企業が次々と廃業し、人材も技術も含めた空洞化が進行していったら…。あまり認識されていないことですが、地震や洪水などの被災時に、我々の業界の多くの技術者が昼夜を問わず、復旧にあたっています。こうした土木の意義や可能性、そして魅力を若い世代へも伝え、従事する全員が“誇り”を持てるようにしたい。業界に属する一人として、それが究極の目標なのです。

photo:Hirokazu Yoneda

企業DATA 株式会社オーク

本社 兵庫県豊岡市日高町上郷字和田991
代表取締役 樫本孝彦
設立 1994年(平成6年)
事業内容 基礎杭工、仮橋・仮桟橋工、仮設土留工、地盤改良工、計量証明事業、試験・調査関連事業等
Webサイト http://www.oak-co.co.jp/
代表取締役(工学博士) 樫本孝彦 Takahiko Kashimoto

1951年、兵庫県生まれ。不在がちだった父の代わりに家を守り、水田とブドウ畑を耕す母を助けたいと幼少期から家事を手伝う。小学5年生頃には自ら耕耘機を操作して畑仕事も手伝うようになり、中学生になると本格的な水田耕作を行なう。基礎工事のコンクリートパイルを製造する企業へ入社。技術開発部に配属され、製法から品質向上に至る数々の功績を上げる。’94年、株式会社オークを設立し、代表取締役に就任。基礎工事専門企業として堅実な実績を積み上げていくと同時に、新工法などの技術開発に積極的に取り組む。結果、業界内で「オークにできない基礎工事はない」と評価されるまでの技術力を有するようになる。なお、’01年には立命館大学の論文審査と試験に合格し、大学も大学院も経ず“独学”で博士号(工学)を取得している。

[出典]頑張る経営者の応援サイト