注目の企業に学ぶ(経営者インタビュー):株式会社スギヤス | 注目の企業に学ぶ(経営者インタビュー) | 大同生命
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注目の企業に学ぶ(経営者インタビュー):
株式会社スギヤス

2019.05

“問題”があるから楽しい。そこには“挑戦”の喜びがある。

株式会社スギヤス

自動車整備用リフトのパイオニアであり、ハンドパレットトラックなどの物流機器とあわせて「Bishamon(ビシャモン)」ブランドで知られる株式会社スギヤス。「健康経営優良法人」「地域未来牽引企業」「あいち女性輝きカンパニー」「愛知ブランド企業」などにも認定され、業界内外、多方面から高評価を得ている企業です。その経営手腕も注目される杉浦安俊社長にお話を伺いました。

1.「いいものを作る」は大前提。そのうえで何をし、どう売るのか。

当社の核となる事業は、小型から大型までのあらゆる車両に対応した自動車整備用リフトと、工場や倉庫、店舗内での搬送作業に用いる様々な物流機器の開発・製造です。その2つを軸に、介護用設備などの住宅福祉機器と、廃棄物の処理機や空気清浄機などの環境機器とをあわせて、国内外で4つの事業を展開しています。創業から70年。ビシャモンのブランド名で積み上げてきた実績は、日本はもとより海外でも評価を得るまでになっています。しかし、私は「我々には“特別な技術”はない」と考えています。現状に甘んじることなく「そこからどうする」と発想し、挑戦することが大切だからです。

確かに過去には「いいものを作れば黙っていても売れる」という時代があったかもしれません。しかし今は違います。いいものを作って当たり前。そのうえで何をするか、どう売るかを考えなければ、良くても停滞、通常なら衰退の一途をたどることになると思います。それは、私が入社前の20代のときに起業した経験もあって、肌感覚で学んでいたことです。実際に当社もリーマンショックの影響を受けた際、営業に対する意識が低かったがために、落ち込んでいく業績を“ただ黙って見ているだけ”という状況に陥(おちい)りました。どれほど技術力があっても、待ちの姿勢の営業スタイルでは景気の波をもろにかぶってしまい、打破できないのです。

それまでは製造部門の発言力が圧倒的に強く、仮に営業が仕事を受けてきても工場の稼働状況によっては「無理」「断ってこい」などと平気で言えるような空気がありました。それをずっと変えたかったのです。

そもそも社内の部門間に存在すべきは、力関係ではなく“相乗効果”であるはず。リーマンショックは、製造と営業の力関係を改善するチャンスだったのです。

まず、販売店や代理店に任せっきりの営業スタイルをやめました。全国各地の店舗や展示会で、販売店の方々と一緒に販売の現場に立ち会い、一人でも多くのお客さまの声を吸い上げられるようにし、写真と品番だけが無機質に並んだカタログから、ビシャモンブランドや私自身をキャラクター化して、楽しめるカタログへと一新。リフトのミニチュア、キャラクターのオリジナルグッズなど、様々な販売促進ツールも制作しました。こうした手法は、BtoCのメーカーであれば普通にされていることですが、BtoBのビジネスにおいてはどれも新鮮です。「製造メーカーが何をふざけているのだ」と嘲笑されることもありましたが、良い評判であれ悪い評判であれ、話題になることが大事です。想像以上の注目を集め、ビシャモンのブランドを認知、浸透させるには非常に効果的でした。次第に私が展示会にいると、見ず知らずの人から「シャンプーくん(杉浦社長のキャラクター)にやっと会えた」「一緒に写真を撮ってください」などと声をかけられるようになったほどです。デジタル化が進むビジネスシーンで、アナログ的な“顔”の見えるアプローチを重視したことにも意味がありました。やはり“伝票だけのやり取り”に終止せず、足を使って「スギヤスさんは一緒になって売ってくれる」と感じていただけたことが、信頼関係の構築につながったのだと思います。ブランディングによるエンドユーザーの方からの指名買い以外にも、販売店の方が当社の製品を勧めてくださるケースが明らかに増えていきました。

ハンドパレットトラック

自動車整備用リフト

2.ESなくしてCSなし。社員が誇れる企業でありたい。

営業のスタイルと意識の改革に取り組むと同時に、営業と製造を有機的に結びつけるための“仕掛け”に着手しました。その一つが、以前は断っていた「改造特注品」の受注です。標準規格品を大量生産するほうが、効率的であることは間違いありません。特注品は、製造と営業が一体となって顧客の要望に一つ一つ応えていかなければならず、手間も時間もかかるうえに、それに見合う利益を得られるわけでもありません。社内でも大反対されました。それでもなかば強引に進めた理由は、新しいことに挑戦する社風を生み出したかったからです。結論をいえば、経営的には成功し、改造特注品の受注が標準規格品の受注も押し上げる形になりました。その一方で、挑戦の意識が社内に定着したかというと、それはまだまだ不十分。今後も継続していく課題だと感じています。ですが「課題や問題点は多いほうがいい」というのが私の持論です。問題がある、見つかるということは、それだけ伸びしろがあるということだからです。

私は当社へ入社して以降、日々の業務の中で感じた問題点、会社に対する不平不満や愚痴まで、全部記録してきました。書き連ねた項目は二百以上もあります(笑)。そのファイルを時々開き、読み直すと、当時の感情を思い出します。もちろん過去の自分の未熟さを感じる項目もありますが、それ以上に「経営者に立場が変わって、いち社員の気持ちをないがしろにしてはいないか」と自省できるからです。また社長に就任してから、部署ごとのリーダーがまとめていた週報を、個々の社員がネット上に直接書き込む日報に変えました。それに毎日、必ず目を通します。2、3時間はかかるので、読み終えると深夜になるのですが、一人ひとりの心の変化に気づけるのです。たとえ遠回しな書き方であっても「チーム内で何か衝突があったのではないか」「プライベートでトラブルを抱えているのではないか」と、様々な異変を察知できます。

例えば緊張感のある職場に見えても、社員が“集中”しているのと“萎縮”しているのとでは全く質が異なります。ES(従業員満足)のない労働環境では、社員たちは“お客さまのために”とCS(顧客満足)を考えることはできません。突き詰めれば、企業経営の最終目標は「社員全員が自分の仕事と会社を誇りに思うこと」なのだと思うのです。

左のイラストは杉浦社長の愛称から命名された「シャンプーくん」と、ブランドキャラクターの「ビシャモンくん」。
右の写真は杉浦社長のアイデアで制作された販促グッズのごく一部。キャンディーや、書籍をパロディ化したメモ帳まである。

photo:Keiji Hanaki

企業DATA 株式会社スギヤス

本社 愛知県高浜市本郷町4-3-21
代表取締役社長 杉浦安俊
創業 1949年(昭和24年)
事業内容 自動車整備用機器事業、物流機器事業、住宅福祉機器事業、環境機器事業等
Webサイト http://www.bishamon.co.jp/
代表取締役社長 杉浦安俊 Sugiura Yasutoshi

1969年、愛知県生まれ。高校卒業後の'87年、アメリカへ留学。'89年頃、投機対象としてブームになりつつあったスポーツカード取引に目をつけ、現地での売買のほか、日本へ卸すビジネスを始める。'93年に帰国し、カードを販売する店舗を構える。同時に、まだ「トレーディングカード」という言葉も概念もなかった日本に文化として定着させるべく、出版社とタッグを組んで本の執筆やPR活動にも従事。年商1億円超えも見込めるまでに事業を確立させるが、'97年に現会長の意向を汲み株式会社スギヤスへ入社する。'08年、リーマンショックを契機に営業を一任され、製造主体の経営に、カード販売を通して学んだサービス業のノウハウを導入。営業方針と意識改革に着手し、業績を上げる。'11年、現職に就任し、自ら“広告塔”となって全国を奔走。今年度は創業70周年にちなんで「7都市縦断展示会」を単独開催。「7(なな)と縦(じゅう)の語呂合わせから発想した、新しい試みです」と笑う。

[出典]頑張る経営者の応援サイト