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注目の企業に学ぶ(経営者インタビュー):
熊本交通運輸株式会社

2020.03

お互いに高め合う信頼関係を築き、ともに繁栄する物流システムを提案します。

熊本交通運輸株式会社

九州・熊本を中心に全国17箇所に拠点を展開する熊本交通運輸株式会社。6百台を超える保有車両と、温度・湿度を管理できる定温倉庫など総面積2万坪以上の自社倉庫、全社一丸となって取り組む結束力を武器に、戦略的な物流システムを提案する総合物流企業です。コンプライアンス重視の姿勢をいち早く打ち出し、顧客との厚い信頼関係を築いてきた住永金司社長にお話を伺いました。

1.商品だけでなく、お客さま間の信用も運んでいるのです。

当社は長距離輸送部門、専属輸送部門、倉庫部門を三本の柱に、物流のあらゆる要望にお応えしている会社です。基本としている事業スタンスは、私どもの物流品質の高さをお客さま自身の強みとしていただくこと。安全、確実、迅速にお届けするために知恵を絞り、物流からビジネスをサポートするシステムをこれまでにいくつも提案してきました。

例えば、創業間もない頃からお取り引きいただいている大手アルミ建材メーカーさまの場合、在庫管理に課題がありました。当時、熊本県下に点在する支店や営業所がそれぞれに在庫品を保管していたのですが、全部で1万アイテムあるとすると「それぞれに100アイテム欠品している」といった状態だったのです。当然、欠品している商品は「横持ち(社内の拠点間で商品移動を行なう輸送)」することになりますから、時間もコストも無駄が出ます。そこで、熊本県内の全営業所の在庫を当社の倉庫に集約して、注文の翌朝までに配送する方法を提案しました。結果、金額ベースでは同じでも1.5倍のアイテム数を在庫できるようになり、即時納品できる状態に変わったのです。

その後、そのシステムの応用形が九州全域、続いて全国規模で採用されていくのですが、相談を受ける中で興味深いお話を聞きました。熊本のある特約店から一組の窓枠の注文があった。在庫を調べると九州はもとより、関西、関東にもない。見つかったのは東北の物流センターで、そこから自社の配送システムに載せたのだが、営業日の関係もあって納品までに一週間もかかってしまった。特約店の方は「熊本に工場もあるのに、なぜ」と…。一週間のロスはライバル企業が付け入る隙になったかもしれません。窓枠一組の物流が原因で、顧客との関係性に亀裂が入る可能性もあったのです。つくづく「当社が運ぶのは商品だけではない。お客さま間の信用も運んでいるのだ」と痛感させられるエピソードです。

私どもは、そのような突発的な事態にも対応できる方法を確立し、現在、同社の九州圏と本州の拠点とを結ぶ一部のルートを任されています。その信頼を裏切ってはいけない、期待以上の成果で応えなければいけないと提案を繰り返し、それは今も続いています。納める住宅メーカーごとに建材のサイズを調整する地域の大工さんや建具屋さんが減ってきていると知って、当社に加工部門をつくりました。直近では昨年春、通常の大型トラック2台分の貨物を輸送できるダブル連結トラック(全長21メートルフルトレーラ)4台を導入しました。それは、積載効率を大幅に向上させると同時に、ドライバーの労働環境の改善や二酸化炭素排出量の削減効果まで見込んだ提案でした。

ほかに、JA熊本経済連さまとのお付き合いの中では、生花を一定の温度を保ったまま運べる新しい輸送方法を開発したことも。もう20年ほど前のことでしょうか、当時、大阪や名古屋の市場で「熊交さんが積んできた花は日持ちが2日、3日延びる」と不思議がられました(笑)。大手のインクメーカーさまの仕事では、残量を確認してインクを補充するところまでドライバーが責任を持って行ない、「そこまでしてくれるのか」と喜ばれています。また、お客さまになり代わって業務を行なう専属輸送部門では、品物に応じてトラックの荷台を改造し、ボディーを塗装し直し、お客さまのユニフォームで作業します。専用の倉庫を建設することまであります。ただ、これらの提案や取り組みの、どれか一つが今の当社をつくったわけではありません。提案の一つ一つがお客さまとの信頼を生み、その積み重ねが信頼を育んでくれた。その結果なのだと思います。

12,000坪の八代鏡倉庫の屋上には全面に太陽光パネルが設置されている。

コンプライアンス教育に特化した全社員研修会を年2回実施している。

2.安全運行と法令遵守。それは“精神論”ではありません。

私は創業からの50年近い歳月を、ひたすら「お客さまのビジネスを有利にするにはどうすれば良いか」と考えてきました。私どもの原点は「物を運ぶこと」ですが、物流によってお客さまが競合他社より一歩先んじることができれば、必然的に当社の運ぶ荷物も増えるからです。しかし、それと同等に、ある意味ではそれ以上に大切にしてきたことがあります。それはドライバーを守ることです。

安全で確実な運行を実現するには、ドライバーが運転に集中できる環境を整える必要があります。長距離輸送をトラック2台にドライバー5人のリレー形式で行なう一気通貫の運行体制を構築したり、最高水準の気象観測レーダーとGPSを駆使して荒天時に本社から安全なルートを指示できるようにしたり、呼気からアルコールが検出されたらエンジンがかからない装置を導入したり…。今はコンプライアンス専任の社員を配置し、全社員が参加する研修会を年2回実施していますが、個々の意識の問題に責任を集約させてはいけません。会社として、考えうる全ての対策をとるのです。

当社の名刺には『我社に「NO」という言葉はありません』と刷ってあります。物流に関して「できない」と答えることはないからです。しかし、社員を守るためであればキッパリとノーと言います。実際、社員への無理強いやコンプライアンスに反する要求があった場合、どれほど大きな契約でも打ち切る決断をしてきました。なぜそこまでと訊かれても、何か特別なきっかけがあったわけではありません。寝る間もなく働けばどのようなリスクが生じるのか、車両や運行体制の不備がどれほど危険なものなのか、私は身をもって知っています。自分自身が経験して危ないと感じたこと、辛かったことを社員にさせたくないだけなのです。

過去、台風のときに「熊交さんだけ届けてくれた」と驚かれたのは、不測の事態にも対処できるドライバーがいたから。繁忙期に「熊交さんだけ積み残しがなかった」と褒められるのは、管理職や事務職も率先して現場に出てくれるからです。本社の敷地内を歩けば「社長、どうぞ」と缶コーヒーを片手に駆け寄ってくれる社員がいます。「自分も熊交で」と親子二代で働く社員が何組もいます。熊本地震の直後、仕事ではなく私どもの体を気遣って「大丈夫か!」と取引先のトップの方から直接電話をいただきました。

40年前、熊本輸送団地営業所の落成式で「夢は自分の歳と同じ台数のトラックを持つこと」だと話しました。その夢も叶えられ、トラック4台から始めた会社は大きくなりました。けれどそれ以上に、人に恵まれ、かけがえのない関係性が築けたことを私は誇りに思うのです。




photo:Seitaro Ikeda

企業DATA 熊本交通運輸株式会社

本社 熊本県上益城郡益城町平田2240-1
代表取締役社長 住永金司
設立 1972年(昭和47年)
事業内容 一般貨物自動車運送事業、貨物運送取扱事業、倉庫業、通運事業、ホテル事業、旅客自動車運送事業等
Webサイト https://kumako-co.jp/
代表取締役社長 住永金司 Kinji Suminaga

1947年、熊本県生まれ。熊本商業高校在学中にお金を貯め、2トントラックを購入。独学で車の整備技術を身につける。卒業後、熊本市内一の鮮魚店に住み込みで働き、そこで学んだ商いの知恵を元手に魚の行商と運送業を始める。'70年代に入ると10トン車を購入してトラック事業を本格化。'72年にトラック4台で熊本交通運輸有限会社を創業する。'92年、創業20周年を機に株式会社に組織変更。以降、倉庫事業、観光バス事業、タクシー事業など、多角化・分社化を成功させ、2010年にはグループの売上高100億円を達成('16年度に140億円を突破)。県下有数の優良企業へと育て上げる。また業界団体の要職のほか地元・益城町商工会の会長なども歴任。「平成29年度国土交通大臣賞」を受賞するなど、その功績は業界内外から高く評価されている。

[出典]頑張る経営者の応援サイト