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注目の企業に学ぶ(経営者インタビュー):
東海プラントエンジニアリング株式会社

2020.04

製造業を支える気概を持った社員たち。その存在こそが当社の財産なのです。

東海プラントエンジニアリング株式会社

中部圏の一大産業拠点である名古屋の南部臨海工業地帯において、各種産業設備プラントの設計・施工及びメンテナンスを行なう技術者集団。それが東海プラントエンジニアリングです。連綿と受け継がれてきた“個の暗黙知”を“組織の技術力”として蓄積。クライアント企業とのより強固な信頼関係の構築と、さらなる飛躍を目指す佐藤孝弘社長にお話を伺いました。

1.産業の“心臓と動脈”をつくり、守ることが我々の仕事です。

当社は各種プラント(機械や装置・工作物など、生産設備の複合体)を設計・施工し、安定操業を支えることを使命とする会社です。

社名にもあるプラントエンジニアリングという言葉は、製造業に関わりのない方にはあまり馴染みがないでしょうか。意訳すると「生産活動に必要な“仕組み”を創造すること」。例えば、京浜・京葉や阪神、中京工業地帯のコンビナートの風景を思い浮かべてみてください。巨大なサイロやタンク(貯蔵建築物の呼称は形状や用途などによって異なる)などの複雑な構造をした設備から、ろ過装置、溶接や配管、地盤改良などの付帯工事も含め、稼働に至るまでの一式をお客さまの要望に沿って完成させることが仕事になります。つまりプラントエンジニアリングとは、このような石油・化学産業をはじめ、鉄鋼・金属、電気・ガス、製紙、食品など、あらゆる産業を動かす心臓、動脈をつくることなのだと思います。また私どもは、その鼓動や血流をチェックし、ケアするドクターの役割も担います。それが当社のプラントメンテナンスです。

当社は60年前から中部電力さまの仕事を受けてきたこともあり、ボイラーやタービン関連など、高速回転体のメンテナンスを得意としています。特にタービンの芯出し(回転軸の調整)や羽根のオーバーホールは、百分の数ミリから千分の数ミリという、極めて精緻な誤差内で再組立てをする必要があります(許容範囲を超えると1秒間に60回というスピードで回転している羽根がバラバラに壊れてしまいます)。もちろんボイラーやタービンを製造している大手メーカーの関連企業であれば、技術指導を受けながらこなすことができます。しかし当社のように、メーカー担当者が不在であっても他社製のタービンをオーバーホールできる企業は、ほとんどないのではないかと思います。

高速回転体に限らず、メンテナンス品質の良し悪しはお客さまの生産力に直結します。例えば、当社の主要クライアントである日本製鉄さまの24時間365日稼働している工場(名古屋製鉄所と大分製鉄所を担当)で、何かトラブルが生じたときに復旧までに3日かかるのか、それとも2日で済ませられるのかでは想像以上に大きな違いがあります。生産量の減少をどこまで食い止めることができるかということはもちろんですが、生産ラインが止まっている時間が長くなるほど、製品の供給先である取引先企業さまにも影響を及ぼす可能性が高まるのです。そのため、どのような突発的な事態にも対応できるようにするとともに、突発的な事態を未然に防ぐ「予防保全」も重要となります。

どのような体制を組むかはお客さまによって異なりますが、日本製鉄さまの場合は当社の社員が常駐して、定期的なメンテナンス計画に基づく巡回整備が基本になります。とはいえ名古屋製鉄所の敷地は632万平方メートルもあり、名古屋市でいえば熱田区の面積に匹敵するほどの巨大工場。しかも相対するのは、鉄を溶かす高温に四六時中さらされている設備です。計画外の工程であっても、故障や問題が発生する前に危険因子を察知する能力も要求されます。

当社の熟練の技術者は、音や炎の色などの微細な変化からも異常を感じ取れるのですが、そうしたマニュアル化できない暗黙知(経験や勘、洞察に基づく知識やノウハウ)は学ぶことも、教えることも容易ではありません。しかし難しいからこそ、蓄積された暗黙知を共有できれば、競合他社との明確な差別化にもつながるはず。“匠の技”というと、メディアでも取り上げられるような“ものづくり”をイメージしますが、メンテナンスにも“匠の技”が多々あるのです。

2.社員が成長する環境づくりが、顧客満足にもつながります。

以前は当社でも「技術・技能は見て盗むもの」でした。「貪欲に学ぼうとする姿勢から得られるものは計り知れない」と考えてきたからです。しかし近年、当社独自のOJT(実際の職務現場での教育・訓練手法)に取り組んできた結果、先輩後輩の双方が“人間力”を高め合う、好循環が生まれているように感じています。

次世代を担う人材の育成に注力しているのは、エンジニアリング業務も同様です。具体的には「設計・工事・営業」の三部門を熟知したユーティリティープレーヤーを育てること。それによってお客さまの困りごとをより正確に汲み取ることが可能となり、当社の生産性も高まり、何より社員自身が仕事のやりがいをより実感できるようになるはずです。実際、現時点で10人のマルチに活躍できる人材が誕生しているのですが、仕事への向き合い方の変化が“表情”にも現れているように思います。

当社の会長は「我々は人がいなければ何もできない。人が財産なのだ」と、人を大切にすることの重要性を口癖のように話します。7年前、私は当時社長だった会長の意を汲んで、理念を具現化するための方策を模索し、抜本的な人事・待遇・環境改善に取り組みました。すると面白いことに、社員の定着率の向上だけでなく、収益も大幅に上がったのです。支出(社員への給与)が増えたにもかかわらずです。一言ではその理由を説明できないのですが、突き詰めると「人を大切にする気持ちを形にした結果」であったことは間違いないと思います。

私どもの仕事は機械化できない部分が多く、労働集約型(人間の労働力に頼る割合が大きい産業)のネガティブな側面から語られることも少なくありません。また、扱うプラントはクライアントの“企業秘密”がほとんどで、例えば建築写真のように記録して家族に自慢することもできません。だからこそ、社員がもっと胸を張れる環境を用意してあげたい…。私は「花よりも花を咲かせる土になれ」という星稜高校野球部名誉監督・山下智茂さんの言葉に惹かれます。どれほど美しい花も、土がなければ咲くことはできません。プラントエンジニアリングの本質もそこにあると思うのです。

経営者として、当然、実績を上げた人は評価します。しかしそれ以上に「彼をサポートした社員の存在も見落とさずに正当な評価をする」。この意識を常に持って、社員の仕事ぶりを評価しています。もし私自身がその気持ちを忘れてしまったら、日本の製造業を「自分たちの仕事が支えている」と自覚し「自分が支えていくのだ」という気概を持った社員の目を、真っ直ぐに見られなくなってしまいますから。

photo:Syuji Takeda

企業DATA 東海プラントエンジニアリング株式会社

本社 愛知県名古屋市南区南陽通り6丁目1番地
代表取締役会長 山田博之
代表取締役社長 佐藤孝弘
創立 1943年(昭和18年)
事業内容 プラントエンジニアリング、プラントメンテナンス、製品開発等
Webサイト http://www.tpe.co.jp
代表取締役会長 山田博之 Hiroyuki Yamada

1954年、愛知県生まれ。青山学院大学仏文学科を卒業後、三井石油株式会社(当時)に入社。'88年、当時会長職を務めていた実父の体調悪化もあり、祖父が創業した東海プラントエンジニアリング株式会社へ入社。現場から管理部門まで業務の全容を把握すると、ある意味で「その日暮らし」ともいえた体制・風土を、先を見据えた経営に変革すべく「中期経営計画」の策定を実施する。また、原価管理の精度を高めることに注力し、結果として3年の間に130%の売上高アップを実現。その後、バブル崩壊や金融危機等があったものの、堅調な成長と安定した業績を計上する経営基盤をつくり上げた。2001年、代表取締役社長に就任。'15年より現職。

代表取締役社長 佐藤孝弘 Takahiro Sato

1958年、福島県生まれ。福島大学経済学部を卒業後、東海銀行(現三菱UFJ銀行)へ入行。支店3ヵ店に勤務した後、本店審査部関連に勤務。主としてリストラクチャリング(企業再生)部門を中心に、数多くの企業の立て直しに奔走する。(三重県)桑名支店長を務めていた2010年、東海プラントエンジニアリング株式会社へ入社。管理部門を統括する社長室長として、全社の人事・教育・企画・システム等の業務を受け持つ。取締役社長室長に就任した'14年、自社の諸課題を解決する手段としてシステムの全面切り替え及び人事給与の抜本的見直しを実施。業務の効率化と見える化を図り、大幅な収益構造の変革を成功させる。'15年、代表取締役社長に就任。

[出典]頑張る経営者の応援サイト