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注目の企業に学ぶ(経営者インタビュー):
加藤運輸有限会社(加藤運輸グループ)

2020.12

自分で考え、自分で動き、実績をあげる。“有言実行”が私の行動原理です。

加藤運輸有限会社(加藤運輸グループ)

千葉県松戸市に本社を構え、日本各地にグループ展開の輪を広げる加藤運輸有限会社。一般貨物輸送事業で積み上げてきた実績を軸に、コールドチェーン(冷蔵輸送)事業など、グループ企業間で様々なシナジー(相乗効果)を生み出し、飛躍的な成長を遂げてきた企業です。自らもハンドルを握り〝独自路線〟を走り続けてきた加藤善信社長にお話を伺いました。

1.“自分のやり方”を追求し、常識にとらわれない道筋を探す。

現在、当社は600台近い車両を保有する物流企業として、日本各地に拠点を構えるまでになっていますが、はじまりは1台の中古トラック。10台、20台、50台、100台と段階的に規模を拡大してきたのですが、その成長過程には私の性格が影響しています。

私は幼い頃から他人と同じことをするのが嫌で、右と言われれば左、左と言われれば右を向くような子どもでした。その性格は成人してアルバイトをするようになってからも同じで、何か指示をされても、自分の考えで動こうとしてしまう。「もっといいやり方がある」「こうすれば早くできるのに」などとイライラしてしまうのです。人の指示通りに動けないなら、独立するしかありません。自分一人ではじめられる仕事を探し、運送業なら“自分のやり方”でできるのではないかと考えました。

昭和半ば、当時は運送会社の下請けで仕事をもらうやり方が業界の“常識”でした。当初は私も、下請けで仕事をしたのですが、そこでも「もっといいやり方があるはずだ」と。荷主さまから直接仕事をいただこうと、営業をはじめました。スーパーや商店、工場などを片っ端から回るのですが、当然、相手にもされません。先方からしても、飛び込みで「荷物を運ばせてほしい」などといってくる運送業者なんて“常識外れ”でしたから、当たり前ですよね。そこで、仕事をいただけそうなところを見つけては、紹介や話を取り次いでいただけそうな人を探しました。それでも簡単ではありませんでしたが、少しずつ仕事を増やしていくことができました。

仕事を直接いただければ、仕事ぶりは荷主さまの目や耳に直接入ります。評価がそのまま実績につながりますから、本当にやりがいを感じましたね。休みなく働くことが楽しくて仕方ありませんでした。この頃の経験は、その後のM&A戦略(企業の合併・買収)にもつながります。

バブル崩壊後、多くの運送業者は車両の小型化を進めました。一度に運ぶ量を増やすより、輸送する回数を増やすことで、大量生産・大量消費の時代から、多品種少量生産の時代に対応していくためです。すると私は、生来の天邪鬼な性格から「みんなが小型化するなら、うちは大型化だ」と13トンのトラックやトレーラーなど、車両の大型化に舵を切りました。もちろん「大型車を利用して物流の効率化を図るやり方がある」と考えてのことですが、この戦略がうまくいき、数年のうちに100台を超える大型車を保有するまでになりました。しかし、それもやがては頭打ちとなり、次の段階を考えなければいけない時期がきました。

新規のお客さまと取引させていただこうと、企業さまへ伺うのですが、例えば5パーセント値引きした見積もりを提示すると、既存の運送会社も同じ額を出してきます。もし同額であるなら、お客さまは間違いなく「取引実績のある会社」を選びます。お客さまは金額も見ていますが、最終的には“実績”なのです。

このままでは価格競争になるだけで、自分の首を絞めることになるだけだと気づいた私は、荷主さまではなく、その荷主さまと取引している運送会社を探しました。下請けになるためではなく、その企業を仕事ごと譲り受けるためにです。そして売却を希望している会社があることを知り、社長以下、全従業員を引き受ける形で事業承継を提案しました。いわゆるM&Aです。

当然、売却を考える会社ですから業績は良くありません。何度も通い、仕事の流れを確認し、お客さまのもとへも同行させてもらいました。「これなら立て直せる」と判断した私は、お客さまに「今までと同じ運送会社の人間が運びます。経営が当社に変わっても使っていただけますか」と交渉し、確約を取り付けることができました。自社の提案では入り込めなかったところに辿り着いたのです。

私の目的はそのお客さまから仕事をいただくこと。もし、加藤運輸の名前にこだわっていたら、いつまでも話は進まなかったでしょう。

2.仕事の達成感を共有し、分かち合うグループでありたい。

私はよく、仲間たちから「加藤は仕事の話になると目がイキイキする」「半分寝ているようなときでもパッと目を覚ますよな」とからかわれます。その理由は何かと考えると、やはり「自分で考えて、自分でやるから」だと思うのです。「これはできないかもしれない」という仕事に挑戦し、どうすればできるかを考え、やり切ったときの喜びは無上のものですよね。お金ではなく、その達成感を得ることが、私のモチベーションになっているのかもしれません。

ただ私の“仕事好き”の側面は、全てが良い方向に作用したとは言い切れません。私は、従業員たちに「とにかくやってみろ、やってみなければ何も分からないだろう」と口うるさく言ってきました。特に若いときは、きつい仕事を前にした従業員ができない理由を並べはじめると、最後は「じゃあいい。おれがやる」となって。結局、私がやり切って「ほら、できるだろ」となってしまうので、従業員は何も反論できなくなりました。

従業員に言うからには、誰よりも自分が一番働かなければいけないと考えてきた私は、運転も営業も車両整備も、それこそ請求書や給与計算まで、会社のことは何でも自分でしようとしてきた。それは一種の義務感でした。けれど私が誰よりも先に動いてしまうせいで、自分が一番嫌だったはずの「指示通りに動いていればいい」という姿勢に、みんなをさせてしまっていたのではないか。成長の芽を摘んでしまったのではないか…。そのような葛藤を覚えるのです。

かつての私は、会社を大きくすることに必死でした。厳しいことを言っても、待遇面で還元すれば満足してくれるはずだと思っていました。しかし「それだけではない」と考えるようになっています。

今、私は新たな挑戦として「グループ企業間を循環する螺旋状の事業構造」を構築したいと考えています。農作物を生産者から仕入れる仲卸。そこから集荷・保管・仕分け・配送するコールドチェーン。さらには農家さんのビニールハウスなどの廃材をリサイクルする施設と、それをさらにレジ袋に変える海外の製造拠点と貿易部門。これらが有機的に作用し、グループ全体で利益を分かち合う仕組みです。完成までの道筋はまだできていませんが、私は挑戦したい。そしてその過程で何度も味わうことになる“仕事の喜び”を従業員たちにも知ってほしいのです。

達成感や充実感を共有し、仕事の面白さを分かち合える会社にしたい。それが私の最大の願いです。

photo:Nobuhiro Miyoshi

企業DATA 加藤運輸有限会社(加藤運輸グループ)

所在地 松戸市小金きよしヶ丘3丁目12番地13
代表取締役社長 加藤善信
創業 1980年(昭和55年)
事業内容 運輸・物流事業、生鮮輸送・保管、製造・販売・リサイクル事業
Webサイト http://www.kato-unyu.co.jp/
代表取締役社長 加藤善信 Yoshinobu Kato

1942年、新潟県生まれ。1台の中古トラックからはじめた運送業を'79年に法人化し、加藤運輸有限会社を創立。約5年でトラック保有台数50台、約9年で100台を超える企業に。2003年からはM&A(企業の合併・買収)による事業戦略を推進し、加藤運輸グループとして成長を遂げる。創立40周年を迎えた昨年、グループの総保有台数は570台を超えるまでになった。

[出典]頑張る経営者の応援サイト