SVリーグ 大河チェアマン インタビュー 前編「改革の鍵は共通の理念─大河チェアマンが語るSVリーグ運営哲学」 | 大同生命 SV.LEAGUE応援サイト | 大同生命
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フカボリインタビュー

SVリーグ 大河チェアマン インタビュー
前編「改革の鍵は共通の理念─大河チェアマンが語るSVリーグ運営哲学」

SVリーグ開幕記者会見で選手と並ぶ大河チェアマン

SVSP-2024-105

このコーナーでは、大同生命SV.LEAGUE(以下、「SVリーグ」)を独自の視点で解剖し、他では聞けないエピソードや舞台裏をお届けします。独占インタビューだからできる、ここだけの内容満載でお伝えします。

今回は、SVリーグを率いるチェアマン・大河正明氏が登場。「世界最高峰のリーグを目指す」という壮大なビジョンの裏にある熱い想いや、自身のキャリアからくるリーグ運営の肝など、SVリーグの新たな挑戦に迫る特別インタビューを、ぜひお楽しみください!

左:当社社長 北原 睦朗
右:一般社団法人SVリーグ 代表理事 大河 正明(撮影当時 一般社団法人ジャパンバレーボールリーグ バイスチェアマン)

大同生命とSVリーグの共通項は「つなぐ」―スポーツの力を社会へ還元

――まず初めに、大同生命とのパートナーシップが始まった経緯を教えてください。

タイトルパートナーになっていただく前から、2023-24シーズンのVリーグ時代より大同生命さんには「マーケティングパートナー」として関わっていただいていました。

私たちが新しく立ち上げるSVリーグについての想いをお話しし、「世界最高峰のリーグを目指す」というビジョンと、「強く、広く、社会とつなぐ」という理念を掲げていることを伝えました。その中で特に「つなぐ」という言葉が、大同生命さんのミッションと共通している部分が多いということが分かりました。バレーボールはそもそも「つなぐ」スポーツです。そして、大同生命さんも全国に広がる支社を通じて地域をつないでいる。そこに強い共感をいただけたことが大きなポイントだったと思います。

全国各地にある支社とバレーボールクラブが連携することで、地域の課題解決や活性化に役立てるような仕組みを一緒に作れないかという話も出ました。バレーボールの持つ「チームワーク」や「連携」の精神をいかして、地域住民を結びつけたり、地域全体を盛り上げたりする活動ができれば素晴らしいですよね。

こうした話を進めたことで、今回のタイトルパートナー契約に至ったという経緯です。単なるスポンサー契約を超え、SVリーグと大同生命さんが共に目指す「社会的な意義を追求する」関係へ。今後もこの理念に基づいた活動をどんどん行なって、スポーツの力を社会に還元していきたいと考えています。

タイトルパートナー契約締結記者会見の様子

――「社会に還元」という部分でいうと、このパートナーシップは地域社会の課題解決にも効果があると考えていますか?

大きな効果を生むと考えています。バレーボールは、もともと企業スポーツ、いわゆる実業団スポーツの文化が強かったのですが、SVリーグができたことで、地域密着のホームタウン型クラブとして活動していく形に変わってきています。その結果、地域社会としっかり向き合いながら、地域に根差した活動をするようになり、まさに「社会とつなぐ」というリーグの理念がここで生きています。

そこにプラスして、大同生命さんのネットワークをいかして、地域特有の課題を解決する取組みを一緒に進めていけたらと思っています。全国に支社があって、それぞれの地域の特性や課題をよくご存じですから、そこから出るご意見やアイデアは、より地元の方々の気持ちを反映しているはず。これまでにないアクションも増え、課題解決に直結していくと感じています。

さらに、大同生命さんの職員の方々やお客さま同士が試合会場に集まり、交流を深めるというのも面白いと思います。「人と人をつなぐ場」を、バレーボールを通じて作っていければ、「大同生命がバレーボールを応援してくれてよかった」と思ってもらえるのではないでしょうか。これからも、地域の皆さまに元気を届けるだけでなく、社会的な課題を解決するために、大同生命さんと一緒にいろいろなアイデアを形にしていきたいと思っています。

信じて任せる―目指すのはチェアマン不在でも機能する組織

――ありがとうございます。ここからは少しチェアマンの経歴にも関わったフカボリをさせてください!ご自身のバックグラウンドが、現在のリーダーシップや哲学に何か影響を与えていると思いますか?

大学は京都大学に進みましたが、中学・高校時代はカトリック系の学校に通っていました。自由な校風で、あまり縛られることなく、のびのびと学べる環境です。こうした経験から、押し付けられるのではなく、主体的に動くことの重要性を学びました。この感覚は、私のリーダーシップスタイルにも直結していて、SVリーグでも「みんなが主体的に考えて動ける」「いい意味での自由」な環境を大切にしようと常々思っています。

実際に、SVリーグの運営では、現場からの意見やアイデアを尊重し、それを取り入れることを心がけています。私がいつも目指しているのは「自分がいなくても回る組織」を作ることです。もちろん、まだその理想には到達していない部分もありますが、若い世代や現場のスタッフがもっと力を発揮できるような環境づくりを進めています。

主体性を重要視することの大切さを学んだ例として、特に印象に残っているのが、バスケットボールBリーグ時代の経験です。開幕ゲームの演出を担当者に任せた際、「昨年と同じことは繰り返さない」という方針だけを伝え、あとは自由に考えてもらいました。その結果、試合直前にセンターサークルで落語を披露するという斬新なアイデアが出てきました。正直、最初は「それで本当に大丈夫なのか?」と不安もありました(笑)。ところが結果的にこれが観客に結構受けて。この出来事は、「若い力や新しい発想を信じて任せることが大事なんだ」と改めて感じさせてくれました。

こうした自由な発想を取り入れる姿勢や、自主性を尊重する考え方で、新しい挑戦を恐れず、若い世代の力を信じて任せるリーダーシップを貫いていきたいですね。

選手に対してオリエンテーション行う大河チェアマン

――大河チェアマンは金融業界でのご経験もあると思うのですが、その経験もやはりリーグの組織作りに影響を与えているのでしょうか?

金融業界での経験ではないかもしれないですが、大きな組織で働いてきた経験は、間違いなく影響を与えています。事実、SVリーグの「組織運営の方法」には、初めに一番大きな変化を求めました。

私は組織の運営には「権限と責任」をしっかり一致させることが大事だと思っていますが、SVリーグ(当時Vリーグ)に関わるようになったとき、最初に驚いたのが、権限と責任が曖昧だったことです。たとえば、最終的な責任を持つべきチェアマンや理事が意思決定をしていない場面や、現場の部長レベルで物事が決められたりしている場面も多かったことです。責任はチェアマンがとっているのかもしれないけれど、意思決定は現場で完結しているとなると、権限をある意味ないがしろにしてるわけですが、大きな会社ではこれはありえないことです。

そこを変えるために、まずはガバナンス体制を整えることから始めました。普通の会社で言う取締役会にあたる理事会や、実行委員会の役割をしっかり明確にして、PDCAサイクルを回せるようにしました。これが、組織全体を一歩前進させる大事な基盤だと思っていて、リーグ運営に関わり始めてからの2年は、とにかくその点を大きく改革しようと努めていました。

リーグの成長には、全員が「同じ方向を向く」ことが不可欠

――Bリーグ初代チェアマンとしてのご経験や成果をいかにSVリーグに持ち込んでいるかというのも気になります。教えていただけますか?

「これは自分の成果だな」と思うことは、実はあまりありません。ただし、私がやってきたことも含め「Bリーグは結果的にはうまくいっている」とは思っていて、それを考えた時に最も重要になってくるのは「同じ方向を向く」ということだと思っています。

Bリーグでは、もともと異なる文化や歴史を持つリーグを一つに統合するという大きな挑戦がありました。その中で重要視したのは、関係者全員が同じ方向を向けるようにすることです。当時、私たちは「BREAK THE BORDER」というスローガンを掲げていました。これは「前例を笑え」「常識を壊せ」「限界を超えろ」という精神を表しています。この考え方を徹底したことで、同じことを繰り返さないようにする文化が生まれ、例えば開幕戦の演出でも毎年新しいアイデアを取り入れるようになりました。LEDコートを使った斬新な演出から、落語を披露するという演出まで、幅広いアイデアが出るのはその一例です。

このスピリッツが職員やクラブの間にも浸透していたことで、今のBリーグの成功があるのだと思います。実際、Bリーグがここまで持続的に成長してきたのは、今でもずっと全員が同じ方向を向いて、「どうすればリーグが成長し続けるか」を真剣に考えた結果なのです。

SVリーグでもこの経験はいかしたいと思っています。クラブや選手、そしてファンが一体となって前に進めるようなビジョンを共有して、「世界最高峰のリーグ」をキーワードに、ただ競技力を高めるだけでなく、全員が同じ方向を向きながら、地域との結びつきや新しいファン層の獲得など、さまざまな取組みを進めていきたいと考えています。

――とはいえ、各クラブの規模や目標は異なるものです。そんな中で、同じ方向を向きましょうと伝えるのは、大変な挑戦だと思います。

そうですね。大変ですが、実現不可能なことではないと思います。やはりリーグとクラブが「共通の目標と理念を掲げる」ことが一番大事だと思います。そして根気よく理解してもらえるようにアクションしていくことも必要です。たとえばクラブの現場担当者は理解していても、それを上司にどう説明したらいいか分からないといった話も結構多いんですよ。現場は変わる意思や熱量はあるのに、実現までが遠いという感じです。こういう時は私が直接説明をするため、クラブを訪問することもよくあります。理念を掲げるだけではなく、理解してもらって、初めて効果のあることだと思います。

SVリーグが本格的にプロ化を目指す中で、バレーボールを事業として独立した運営法人を作る必要が出てきましたが、それは今やっと出てきた話題でもありません。ここ30年間ずっと、みんな分かっていて、挑戦はしてきたけれど苦戦してきたというのが実態です。1994年にVリーグがスタートした時も、Jリーグに負けないくらい人気を集めようと意気込んでプロ化を目指したのですが、結局失敗し、次に2016年にプロ化宣言をしましたが、それも結果的にうまくいきませんでした。

その理由の一つは、SVリーグが何のために存在しているのか、何を目指しているのかという軸が定まっていなかったからだと思っています。JリーグやBリーグを真似するだけでは、誰も納得してくれない。ここ2年の間で私は、「プロでもアマチュアでも構わない。ただ、お客さまがチケットを購入して試合を見に来てくださっているのだから、それに見合う楽しさを提供しよう」という考えを伝え続けてきました。

お客さまに試合を観戦して「今日は楽しかった、また来たい」と思ってもらうためには、ただ試合をするだけではなく、飲食や物販の充実、チアリーダーの応援、イベントの演出など、全体の体験を豊かにすることが必要です。勝ち負けはスポーツにつきものですが、「負けたけど楽しかった」と思ってもらえるような運営を心がけなくてはいけない。

こうした取組みを重ねる中で、ようやく「やはり運営法人を持たないと難しい」と気づくクラブが増えてきました。共通のビジョンを掲げて一体感を持ちながら進めることで、少しずつみんなの意識が統一されつつあると感じています。

後編「意識改革から未来をつなぐ─SVリーグがもたらす世界基準」に続く

大河 正明氏

大河 正明氏

1958年生まれ。金融業界などを経てJリーグ常務理事、Bリーグ初代チェアマンを歴任。
2024年7月、SVリーグ代表理事に就任。

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