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フカボリインタビュー

「弱さを乗り越える強さ」―大阪マーヴェラス 林琴奈選手が語る、自分との向き合い方

パリ五輪、輝かしい舞台に立つ日本代表。その中でも、25歳という若さで大舞台を背負った林選手。
彼女が抱えた重圧は、想像をはるかに超えるものだったはず。それでも、そのプレッシャーを跳ね返し、国際大会で躍動する姿を私たちに見せてくれました。

「試合に負けるのが嫌で、バレーボールを辞めたいと思ったこともある」。
そう語る彼女は、自他ともに認める“負けず嫌い”。しかし、そんな勝負師の顔の裏では、普段はおしゃべりでよく笑う、親しみやすい一面も。

勝利への執念と、素の自分。この相反する二つを見事に切り替え、常に自分らしく在り続ける林選手。
そのメンタルコントロールの秘訣とは?副キャプテンとしてチームを引っ張る「組織の要」としての一面にも迫ります。

ネガティブで、弱気になりがち。「自信が持てない自分」に勝つには、積み上げるのみ。

――林選手はとても真面目な印象ですが、ご自身ではどのような性格だと感じていますか?メンタルも強いタイプでしょうか?

どちらかというと、自信をなくしやすく、正直かなりメンタルも弱いと思います。「真面目」と言われることは多いですが、私はかなりの負けず嫌いなので、後悔したくない一心で、必死にやっているだけという感覚です。昔から試合でミスをすると、「自分のせいで流れが悪くなったんじゃないか」と考えてしまうことや、「次も失敗したらどうしよう」と不安になってしまうことも多くありました。
でも、その弱さに気づいたからこそ、「じゃあどうしたら乗り越えられるんだろう」と考えるようになりました。落ち込んだままでいると次のプレーもうまくいかなくなることも経験していたので、この悩み方では何も解決しないんだと少しずつ学びました。試合はもちろん、どんなことでも、すべてが完璧にうまくいくことなんてほとんどありません。それなのに、全てうまくいくようにしようとしてしまって、自分を追い込んでしまうのは、あまりにもったいないと思うようになりました。

また、私は積み上げたもので自信をつけていくタイプだと、自分でもわかっているので、日々の練習を最も重要に考えています。その一つとして、「今日の100%を出し切る」ということを強く意識しています。気持ちが乗らない日や疲れが抜けない日もありますが、「今の自分にできることを全力でやる」という意識がとても大事だと思います。それを続けることで、「ここまでやったんだから大丈夫」と思えるようになります。自分の中に小さな積み重ねを作っていくのが大切で、それが自信につながります。

どれだけ頑張っても「今日はダメだったな」と思う日も当然ありますが、「じゃあ明日はどうするか」と考えて、次に向けて切り替えることが大事なんだと思います。完璧じゃなくてもいいと思うので、その日の自分にできることをしっかりやる。それを積み重ねていけば、少しずつ自信がついてくるし、どんな時でも強い気持ちが出てくると信じています。

辛い時に駆け込むのは家族。どうしようもない時は溜め込まないことを大事にする。

――お話を聞いていると、林選手からはとにかく前向きな印象を受けます!常に前向きに挑み続けることで、心が疲れ果てたりはしませんか?そういった場合はどのように解決しているのでしょうか?

そうですね、時々ちゃんと疲れます(笑)。
私は、負けず嫌いさも相まって、試合や練習のことばかり考えていると、どうしても気持ちが張り詰めてしまいます。私の場合、オンとオフをきちんと切り分けないとダメな方にばかり考えてしまうので、YouTubeを見たり、Netflixでドラマを観たり、友人や家族、姪っ子と電話をすることで、気持ちを切り替えています。
特に、家族の存在は大きいです。母と電話で話すだけで気持ちが楽になります。正直、アドバイスを求めているわけではなく、ただ話を聞いてもらっている感じです。それだけでも、気持ちがスッキリするんです。試合でミスをして落ち込んだときも、母に話すと「大丈夫、大丈夫」と言ってくれる。母の立場からすると、娘が落ち込んでいる声をきくだけで、心が苦しいはずなんですけど、かならず前向きな言葉をくれます。だから、その言葉を聞くだけで、「よし、次また頑張ろう」と前向きな気持ちになれます。私は無意識に色々な悩みを溜め込んでしまうタイプなので、溜め込まずにとにかく吐き出すというのも、気持ちを切らさずに戦っていくのに必要なことなのかなと思います。

誰かに聞いてもらってスッキリさせる、そして自分のいいところを見直して気持ちを入れ替える、これは色々な人に効果のあるメンタルケアじゃないかなと思います。

自分たちの成長のためにプレーする。チーム全体で選手の心に向き合ってくれている。

――女子日本代表でも活躍する林選手ですから試合前や大きな大会の前、負けられない一戦の前、想像を絶するような重圧を感じることもあると思います。そういった追い込まれた状況下では、どのように自分の心と向き合っているのでしょうか。

試合前はやっぱり緊張します。大きな大会ともなると、注目度も高くなるので、本当に緊張します。でも、そういう時って無意識に「誰かの目」を気にしてしまっていて、自分たちが何のためにプレーしているのかも見失っていることが多いと思っています。知らないうちに「結果」だけを気にしてしまって、どうやったらその結果に辿り着けるかを考えずに進んでしまうという感じです。私の経験から考えても「もっと頑張らなきゃ」と思いすぎると、逆に力が入りすぎてしまってうまくいかないことの方が多い。だから、試合前はできるだけ「自分がやるべきことだけをやろう」と考え、誰かのためじゃなく、自分たちのために成長しようと考えるようにしています。

チームとしても、大阪マーヴェラスではメンタルコントロールを大事にしています。試合前に自分の気持ちを整理するためのチェックシートのようなものを使って、自分自身と向き合うという手法も取り入れています。今の気分が「落ち着いている」「興奮している」「不安」などを記録し、自分のメンタルの傾向を把握することで、どんな状態のときに調子がいいのかを知ることができるというものです。「自分はこういうときに力を発揮しやすい」ということが分かると、それだけで安心感が生まれますし、試合前のルーティンとしてすごく役立っています。自分の成功パターンを知るということで、無意識に自信も持てたりする効果もあるなと感じています。

チームを動かすのは「前向きな言葉」。下を向いていて物事がよくなることはない。

――ご自身では、まだまだ心が弱いと感じていますが、今季は副キャプテンにも抜擢されて、頼られる立場でもあります。副キャプテンとして組織への貢献の仕方において、どのようなことを意識していますか?

私はガンガン意見を言うタイプではないので、チーム全体を見てバランスを取ることに重きを置いています。キャプテンだから意見を言わないといけないっていう風潮もあると思うので、そこを少しでも軽減できないかなは普段よく考えています。私が前に出る必要はなくて、みんなが前向きになれば、このチームはどんどん強くなっていくと思っています。

そんな中でも、特に意識しているのは、うまくいっていない選手や、出場時間が限られている選手の気持ちのフォローです。バレーボールはチームスポーツ。試合に出るメンバーだけが戦っているわけではなく、ベンチの選手やスタッフも含めて、全員で戦っています。でも、その伝え方がなかなか難しくて、ただ「頑張れ!」と言うだけでは伝わらないこともあります。だから、具体的に「このプレーはすごく良かったね」と、前向きなフィードバックを伝えるようにしています。選手は誰でも成長できるし、成長すればチャンスも増える。誰でも下を向くと、絶対に悪い方に悪い方に行ってしまうので、どうやったらみんなが前向きになれるかをひたすら考えるように意識はしています。

――年齢的にもチーム内では中堅の林選手が、これから成長していく若手メンバーに伝えておきたいことはありますか?

人のせいにはしない。これに尽きます。うまくいかなかったときに、「この人の声が悪かった」「周りのせいでこうなった」と考えてしまうことってあります。でも、矢印を他人に向けてしまうと、チームの雰囲気も悪くなるし、結局自分のためにならないと思います。だからこそ、自分にしっかり目を向けることが大事です。何かうまくいかなかったとき、「自分は何が足りなかったのか」「よい部分はどこなのか」と考えること。自分をコントロールできるのは自分しかいないので、そこは若手の選手にも意識してほしいなと思っています。

また、バレーボールだけ頑張っていればいい、というふうに考えてしまう人も多いと思うんですが、それ以外の部分もすごく大事だと思っています。たとえば、挨拶や礼儀、先輩がやっていたら自分も代わりに動くとか、そういうことは社会に出ても必要なことだし、バレーボールのプレーにもつながる部分だと思います。この間もチームでミーティングをして、「バレー以外のところがプレーにも影響するよね」という話をしました。試合や練習だけじゃなく、普段の姿勢や考え方が大切なんだと改めて感じました。

――最後に読者のみなさまにメッセージをお願いします。

人間だから、心に余裕がなくなることは誰にでもあると思います。そういうときに、自分を見失わないようにしてほしいです。いつだって「自分の良さ」に目を向けることが大事だと思います。自分では分からないときは、周りに聞いてみるのもいいし、ちゃんと自分の強みを知ることで、気持ちを前向きに持っていけると思います。

私も、本当に何回も何回も失敗するんですけど、でもそういう時に「失敗したからダメ」ではなく、「じゃあ次はどうするか」と考えることが大事だと思います。最初から完璧にできる人なんていないし、一回でできるようになんて無理です。私も一回で出来たことなんてほとんどないと思います。できないことが当たり前、うまくいくことのほうが少ない。だから、何度もチャレンジすればいいと思っています。続けていけば、少しずつでも前に進めるし、自分の成長にもつながるはずです。
前向きに続けていけば、きっと道は開けるし、人生も少し明るくなるんじゃないかなと思います。自己分析と、心の切り替えをしながら、一緒に頑張っていきましょう。私もバレーボール頑張ります!

大阪マーヴェラス 林琴奈選手

大阪マーヴェラス 林琴奈選手

日本代表でも活躍する守備力に優れたアウトサイドヒッター。安定したレシーブと冷静なプレーが持ち味。

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