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フカボリインタビュー

私を追込み、そして育ててくれたプライドという呪縛――SAGA久光スプリングス 平山詩嫣、挫折を受け入れて

コート上で淡々と、クールに自分の役割を遂行するミドルブロッカー 平山詩嫣選手。
彼女は自身のテーマを「黒子」「目立たなくていい」という言葉で何度も表現してきた。
しかし、そのクレバーで静かなキャラクターの奥底には、滾る(たぎる)ような負けず嫌いと、打ちのめされた二度の決定的な挫折体験が刻まれていました。
自分を縛り続けてきたプライドという呪縛と向き合い、自らの弱さを受け入れた彼女の「泥臭い覚悟」に迫ります。

「あなたは選ばれない」受け入れ難い言葉に崩れ去ったプライド

――平山選手はご自身のことを「目立たなくていい」と度々表現されていてクールな印象を受けますが、元々は非常に負けず嫌いで熱い性格だと伺いました。どのような意図でこのフレーズを使っているのでしょうか?

最初から目立たなくていいと思っていたわけではありません。
実は「そう言っておかないと自分を保てなかった」というのが本音です。あまり話したことのない過去なのですが、私は元々、とてもプライドの高い人間でした。(笑)
そんな私が「黒子」に徹するようになったのは、中学時代に経験した二つの決定的な挫折があったからです。

私は、地元中学のバレー部でも身長が高く「打てば決まる」という環境にいました。地元では敵なしという環境で「自分は特別だ」という高飛車な全能感が無意識に育っていたと思います。その鼻を折られた最初の挫折が、中学3年で参加した全国合宿でした。同世代の石川真佑選手のプレーを目の当たりにし「これが本物のエースと呼ばれる人間か」とあまりのレベル差に強烈な衝撃を受けたのです。ショックを隠して平然を装い、何とか合宿を乗り越えましたが、帰り道の花巻空港でさらなる追い打ちが待っていました。それは合宿に引率してくれていた父からの言葉でした。父は、幼少期から私をお姫様のように扱い、たくさんの愛情を注いでくれていました。私の一番の味方だと思っていた父から「あなたは今回の選考には選ばれないと思う。恵まれた体格と環境があっただけだと分かったでしょう?」と告げられたのです。あまりにストレートな言葉を受け止めきれず、その場で泣きました。これが二つ目の挫折です。心が折れ、バレーに関わる自信すら失ってしまいました。

――とてもショックな出来事ですね。どうやって持ち直したのでしょうか?

結果的に、選考で最後の12人まで残ることができたものの、自信を失っていた私は「なぜ私が?」と疑問を抱えていました。
すると選考の先生から「君は何でもできるから選んだんだよ」と言われました。
その頃私は、チームでレフトだったけど、コーチである父の指示でミドルもやっていたんです。これは、父が「背が高いだけではダメだ」と考えてくれていたからでした。当時は色々やって大変だと思うこともあったけど、歳を重ねるうちにあの時の父の考えとその重要性がわかりましたし、感謝しています。そしてそんな自分のプレーを評価してくれる人が他にもいた。自分のプレーを、密かに肯定的に評価してくれる人がいた。大きな喜びと共に、父に日頃よく言われていた「見てくれている人は必ずいるから大丈夫」という言葉が頭をよぎりました。
華やかなエースになれなくても、与えられた役割を愚直に完遂することならできる。それを見てくれる人も必ずいる。いつかくる壁を父は知っていたのかもしれない。そう思えたこの瞬間から「目立たなくていい」という言葉を自分に言い聞かせるようになりました。この言葉を口にすることで、「特別ではない自分」を少しずつ受け入れ、なんとか前に進むことができたのだと思います。

自分を支えてきた「強い誇り」は、同時に「高すぎるプライド」として自分を締め付ける

――「黒子」として腹をくくった一方で、ご自身の内面には今も非常に高いプライドがあると分析されていますね。

自分でも本当にプライドが高い人間だと思います。ですが、そのプライドがあったからこそ、自分はここまでやってこられたのだとも思っています。試合に出られず苦しかった時期や、思い通りの結果が出ずに落ち込んだ時、自分を踏みとどまらせてくれたのは「私は日本一もアジア一も世界一も経験してきた」という強い誇りでした。折れそうな自分を支え、成長させてくれたのは間違いなくこのプライドです。

しかしプロとして数年経つ頃には、その高すぎるプライドは「自分を縛り付ける呪縛」になっているのではないかという葛藤も感じ始めていました。長年私は、人に相談することは負けと思い込んでいて、弱みを見せたら終わりと感じていました。幼い頃から「しおんは一人でも大丈夫、しっかりしている」と言われ続けてきたことが自分の根底にあり、それがいつしか完璧でなければいけないという悪い方向のプライドとして積み重なってしまったのかもしれません。スパイクの練習をしたい時でさえ、チームメイトに「付き合ってほしい」と言えませんでした。けれど、日本代表のメンバーに登録されているにも関わらず国際大会に呼ばれなかったという経験や、後輩たちの台頭を目の当たりにする中で、プライドの高さだけでは超えられない壁にぶつかりました。自分ひとりの力や、プライドを振りかざすだけでは辿り着けない場所があるのだと、プロ生活を重ねる中で痛感させられたとも言えます。

孤独の鎧を脱ぎ捨てる。呪縛が解けた瞬間。

――しかし今では誰よりも泥臭い努力をしているというお話も聞いています。周りに弱みを見せられるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

本当にここ2~3年の出来事なのですが、一番のきっかけはチームの先輩だった大竹里歩さんの存在でした。私が暗い表情をしている時に真っ先に気づいて優しく声をかけてくれて、私が素直に甘えられる環境を自然と作ってくださった。そして昨年、同い年の籾井あき選手がチームに加入したことも絶大な変化をもたらしました。これまでチームに同級生がいなかった私にとって、同じ年齢で同じ目標を持ちながら「全く違うポジション」という存在は特別でした。ポジションが違うからこそプライドが邪魔をせずに、何でも話せる関係になれました。

――正反対の性格を持つ仲間との対話が、平山選手に新しい居場所を作ったのですね。

籾井選手は私とは全く違う角度から物事を見る人です。だからこそ自分が一人で深刻に悩んでいる時に話すと想像もしていない答えが返ってくる。その瞬間に「あれ、何にそんなに囚われていたのだろう」と肩の力が抜ける感覚があります。人に話して客観的な意見をもらうことは、決して負けでも弱さでもない。そう思えるようになって初めて、「相談=負け」という長年の呪縛から解放されました。今では、背中を押してほしい時は思考の似ている父に、頭を整理したい時は正反対のタイプの人に相談するという自分なりの工夫もできるようになっています。

これからも黒子でいい、だけどやっぱり負けたくはない

――葛藤や自己との対話を乗り越えた今、これからのご自身の姿勢や目指すべき姿について教えてください。

高いプライドは私をここまで育ててくれましたし、自分を支える大切な誇りです。でも、プライドを振りかざして一人で溜め込むだけでは辿り着けない場所があることも、今の私は知っています。
綺麗に格好をつけるのはもうやめました。一人で考えすぎて落ち込んだり、気にしすぎてしまったりする自分も受け入れた上で、これからはチームのために、なりふり構わず結果だけを追い求めていきたい。人からどう見られるかというプライドではなく「決めたことを徹底してやり抜く自分」に対して、新しいプライドを持ちたいと思っています。

これからも「黒子のシオン」で私はいい。だけどやっぱり絶対に負けたくはない。だからこそ、今シーズンの目標として監督に宣言したのは「スパイク決定率50%以上」です。パッと見で目立たないポジションだからこそ、試合を見ていない人でも一目で納得する「数字」という絶対的な結果も一緒に出したい。そしてもう一つ、毎年私が掲げるポリシーである「絶対にけがをしない」こと。いつコートに送り出されても最高のパフォーマンスができるように、心と身体のコンディションを整え続けることが、けがをしないというポリシーにつながります。そうして己を磨き続けることで、また代表にも呼ばれたいと思っています。

――どこまでもストイックに思考を止めない印象があります。平山選手の根底にある原動力は何なのでしょうか?

平山詩嫣のファンがいるから、できることは全部頑張りたい。それに尽きます。
目立たない戦いなのかもしれないけれど、父が言ってくれた「見てくれている人は必ずいる」という言葉通り、私のプレーをずっと見続けて支えてくれる人たちがいる。自分を育ててくれた意地のプライドと、腹をくくった新しい泥臭さのプライド、どちらも私として受け入れて、ファンの方々に喜んでいただけるよう、このチームで最後の日まで戦い抜きたいと願っています。

みんなの投票で選ばれた「もっとも平山選手に聞きたい質問!」のコーナー

Q. 優勝のご褒美は何にしましたか?

A. ネックレスを買いました。誰にもらったのと聞いてもらうことがよくありますが、自分で買いました。(笑)

本記事は2026年8月に実施したインタビューに基づくものです。

SAGA久光スプリングス 平山 詩嫣選手

SAGA久光スプリングス 平山 詩嫣選手

アジアU20選手権優勝などを経験。高い戦術理解度とボディコントロール能力を備え「状況判断と役割の完遂」を徹底するミドルブロッカー。
自らを「黒子」と称しながらも、圧倒的な責任感を持ってチームを支える。

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