【通史編】2002-2010 「第3の創業」からの歩み | 未来を切り拓く時代 | 大同生命120年史
このページの本文へ移動

通史編2002-未来を切り拓く時代

1600

1900

1930

1950

1970

2000

2020

2002-2010

「第3の創業」からの歩み

大同生命には「3つの創業」があります。1902年7月、まさに大同生命が誕生した「第1の創業」。そして1970年代のはじめに、中小企業を対象とした定期保険路線にビジネスモデルを転換した「第2の創業」です。さらに、環境が大きく変化する中でさらなる変革を目指し、株式会社化・上場を果たしたのが「第3の創業」(2002年4月)です。

この年、創業100周年を迎えた大同生命は、お客さまに尽くす姿勢を一層新たにし、様々な取組みを展開。その2年後(2004年4月)には、日本で初めて生命保険事業を中核とする持株会社「T&Dホールディングス」を設立・上場するとともに、製品や経営手法などにおいて優れたイノベーションを起こした企業に贈られる「ポーター賞」を受賞(2004年12月)するなど、ビジネススタイルに磨きをかける態勢が整いました。しかし、2005年2月から始まった生損保の保険金不払い問題、そして、2008年9月のいわゆる「リーマン・ショック」で、大同生命は試練の時を迎えます。生損保各社で発覚した保険金の不払い問題が大きく社会の関心を集める中、2008年7月、大同生命は初めて他の生命保険会社とともに行政処分を受けることとなりました。またリーマン・ショックでは、営業活動と資産運用の両面で大きな影響を受け、2008年度の決算でグループの経常利益がマイナスとなります。社是に「加入者本位」「堅実経営」を掲げる大同生命にとって、この二つの出来事は、業務品質のさらなる向上とリスク管理の一層の高度化に取り組む契機となりました。

業界初の株式会社化・上場

2002年4月1日、大同生命は国内生保で初めて相互会社から株式会社に組織変更を行い、東京証券取引所および大阪証券取引所(現在の大阪取引所)に上場しました。初値は東京証券取引所で32万円、大阪証券取引所で30万円。いずれも公開価格(上場に際して行う公募価格)を上回りました。大同生命の株式会社化・上場は、3年以上もの月日をかけて用意周到に進められたものです。その間、社内では株式会社化・上場に向けた「意識改革プログラム」を展開し、あらゆる業務に「透明性」を確保するよう従業員に意識づけました。事前の投資家説明会などで一定の手応えを得ていましたが、満を持しての上場初日、初値が公開価格を上回ったことで、それまで準備を進めてきた経営陣と担当者はほっと胸をなでおろしたのでした。

新中期経営計画「CS21」

株式会社化・上場を果たした2002年は、折しも大同生命の創業100周年にあたります。この大きな節目に向けて、会社全体を変革する指針として策定したものが、2000年度から2004年度までの中期経営計画「CS(Challenge&Speedy)21」です(後に計画の終期は2003年度に前倒し)。相互会社時代の中期経営計画は、より良い会社にするために各部門長が社長(もしくは取締役会)に対して行う「宣言」であったのに対し、新たな計画は「株主(株式市場)に対するコミットメント」でした。このスタンスは、当時の社報に記された「収益を軸に企業価値の増大を実現する」という言葉にもよく表れています。

創業100周年事業

中期経営計画「CS21」で示した「企業価値の増大を実現する」という大同生命のスタンスは、創業100周年を記念して展開した事業にも織り込まれています。全国の中小企業経営者1万人を対象としたアンケート調査を実施し、課題の解決や企業経営の革新に通じるアイデアやヒントを集約したレポートを公表。この取組みは現在の「大同生命サーベイ」に受け継がれ、毎月調査を継続実施しています。また全国各地の大学でオープン講座を開設し、中小企業経営者が経営・ビジネスに関連する知識やスキルを習得できる機会を提供しました。これは翌年度以後も毎年継続開催し、現在は創業120周年(2022年)を機にリニューアルされた「中小企業の学びの場」として展開しています。また創業90周年(1992年)から継続してきた障がい者スポーツ支援の領域では、知的障がい者スポーツ連盟が主催するサッカー世界選手権「INAS-FIDサッカー世界選手権大会」に特別協賛とボランティア協力を行いました。これは、当時世間の注目を集めていた2002 FIFAワールドカップ(日韓W杯)の開催に合わせたものでもありました。

T&Dホールディングスの設立

2004年4月、大同生命・太陽生命・T&Dフィナンシャル生命を傘下に持つ「T&Dホールディングス」が、日本初となる生命保険事業を中核とする持株会社として東京証券取引所に上場しました。これにより2002年4月に株式会社化・上場した大同生命、翌年4月に株式会社化・上場した太陽生命は、上場を廃止しました。太陽生命との全面提携(1999年1月)に際して構想したグループ経営の体制が、5年の時を経て実現したこととなります。以降、今日に至るまで、T&Dホールディングスは、大同生命・太陽生命・T&Dフィナンシャル生命の3社に加え、ペット&ファミリー損害保険会社、T&Dアセットマネジメント、T&Dユナイテッドキャピタル、All Rightなど、T&D保険グループの事業領域を拡大し、様々なステークホルダーの満足度を高めるための取組みを推進してきました。

ポーター賞受賞

製品・プロセス・経営手腕などにおいてイノベーションを起こし、各業界で高い収益性を有する日本企業を表彰するため、2001年に一橋大学で「ポーター賞」が創設されました。名称は、ハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授に由来しています。大同生命は「中小企業の経営者の死亡などのリスクをカバーする保険を提供するため、中小企業団体や公認会計士・税理士団体との販売提携や、公認会計士・税理士との代理店契約により、ユニークな販売体制を作り出した」という点が高く評価され、2004年12月に同賞を受賞しました。保険業界で初となるポーター賞の受賞は、「第2の創業」から約30年にわたり、先人が絶えず磨き上げてきた「中小企業経営者向け保険市場の創出」という革新に対する揺るがない評価となりました。

保険金不払い問題

数多くの保険会社が起こした、いわゆる「保険金不払い問題」(2005年2月〜)で、大同生命は2008年7月に、金融庁から他9社とともに業務改善命令を受ける事態となりました。大同生命は「不適切な不払い」「支払い漏れ」「請求勧奨漏れ」に関する再発防止策の策定と実践を求められたことを受け、同年8月、72項目にわたる改善計画を金融庁に提出し、当該計画に基づいて保険金・給付金の支払管理態勢を整備しました。「加入者本位」を社是としてきた大同生命は、面目を失うような結果となりました。「法人会・納税協会・TKC全国会・税理士協同組合といったビジネスパートナーとの関係からも、二度とこのような事態を発生させてはならない。保険金や給付金のお支払にこそ大同生命の存在意義がある」という原点に立ち戻る機会となりました。

リーマン・ショックの発生

2008年9月15日、いわゆる「リーマン・ショック」の発生により、日本経済も大きな影響を受けることとなりました。日経平均株価は1万2千円からわずか1カ月で約半分の6千円台にまで落ち込み、2009年度のGDP成長率はマイナス5.7%と景気が急速に冷え込みました。中小企業を主要顧客とする大同生命は、資産運用環境の悪化に加えて、新契約の減少と解約の増加が重なり、経常利益は「第2の創業」以降初めてのマイナスとなりました。その結果、T&D保険グループとして発行済み株式の約11%にあたる約700億円の増資を行うこととなります。「堅実経営」を社是としてきた大同生命は、1990年代後半に相次いだ他生保の破綻を受けて、それまでも厳正なリスク管理に取り組んでいましたが、リーマン・ショックのように急激かつ社会全体がダメージを受けるような事態に際しては、なすすべもありませんでした。

リーマン・ショックの教訓を活かして

リーマン・ショックの経験を踏まえ、大同生命はリスク管理の方法を根本から見直します。それまでのリスク管理は、特定の条件で計測したリスク量に対し、一定以上のバッファ(余裕)をもつことを基本としていました。そうした手法を見直し、将来起こる可能性のある環境変化において、高確率でバッファがプラスとなることを随時確認するような管理手法の開発・実施に踏み出すこととしたのです。その結果、会社を取り巻く様々なリスクについて、リスク・収益・資本を一元的に管理することで企業価値の最大化を図る「ERM(Enterprise Risk Management)」の導入(2013年)につながりました。